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2011/07/08

人類の軌跡その143:ミステリー25 ローマ・カトリックの正当性

<コンスタンティヌスの誓書>

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 ローマ・カトリック教会の歴代の法王は、600年間に渡って、キリスト教世界の支配者たる資格を「コンスタンティヌスの誓書」においていました。

 コンスタンティヌスは、キリスト教に改宗した最初のローマ皇帝で、西暦315年に彼は、宗教的発心とハンセン氏病からの奇跡的な回復を感謝して、帝国の半分を奉納したとされていました。
帝国譲渡を記した彼の誓書によって、地球上のあらゆる教会に対する、精神的権威とローマ、イタリア全土、西欧世界の世俗的権力がローマ法王に与えられました。
それを打ち破ろうとする者は、「地獄の奈落で炎に焼かれ、悪魔や不信心者と共に滅ぶ」のです。
 
 3000語からなるこの誓書は、9世紀に初めて存在が知られ、東方対西方教会のいがみ合いに強力な後ろ盾と成りました。
この宗教紛争は、1045年に東方正教会とローマ・カトリック教会の分裂という悲劇を招きました。

 少なくとも10人の法王が、誓書をその権威の拠所と主張し、15世紀迄、それが贋作であると疑われた事は在りませんでした。
しかし、15世紀最大の神学者、クーザのイコラス(1401年~1461年)が、コンスタンティヌス大帝と同時代であり、その伝記を書いたカイザリア(パレスチナ北西部の古代都市)のエウセピウスが、皇帝の帝国譲渡に何も触れていない事に気づいたのでした。

 現在、誓書は保々贋作と、大部分の神学者は考えており、西暦760年頃ローマで編纂されたと見なされています。
しかもこの編纂者は、特に博識な人物では無かったらしく、例えば、誓書にはコンスタンティノープルに対する、ローマ法王の主権を書き記していますが、この都が建設されたのは、時代が全く異なり、フランスの哲学者、ボルテールが、「もっとも、鉄面皮な贋造物」と評したのも無理のない話です。

終わり・・・
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