<ナチス全体主義への道その3>
ドイツ復興
◎経済政策 ヒトラーの経済政策は、国が公共投資を始めとする有効需要を生み出すと云うケインズ政策でした。
しかし、一般に景気拡大期となると、通貨発行量が増大するので、通貨価値の下落、所謂インフレーションが発生するのですが、ドイツ国立銀行総裁と経済相を兼任したヒャルマー・シャハトはインフレーションを抑えて好況を実現し、溢れていた失業者を激減させた為に「マルクの魔術師」と賞賛されました。
インフレーションなき好況は、理想の経済状況と言えます。
公共投資で有名な例は、アウトバーン(高速道路)なのですが、このアウトバーン建設については、当時の自動車普及率を考えると不要の物という意見も存在したものの、飛行機の滑走路として使用する事や、兵員や物資の移動といった軍事的利用の側面から見れば、必ずしも不要とは言い切れません。
この公共工事を行う為には巨額の資金が必要ですが、この財源は適正な財政規模を遙かに上回る巨額の赤字国債で賄われました。
しかしこれでもt財源不足をきたすと、「メフォ手形」を発行します。
これはドイツ国立銀行総裁シャハトが考案した方法で、「金属調査会社」というダミー会社を設立し、兵器発注をおこなわせ、支払は同社発行の手形で行い、その信用保障を国立銀行が行いました。
手形の償還期限は3ヶ月、但し、期限がくると自動的に3ヶ月延長され、5年まで延長を繰り返すことができました。
この手形は、一種の国債による方式での通貨増発を伴わないので、インフレの心配が在りませんが、事実上の偽装国債なのです。
「金属調査会社」の略称は「メフォ」。
そこでその手形は「メフォ手形」と呼ばれ、一般には会社の性質は秘密とされました。
このメフォ手形で得た資金の大半は、国民生活向上よりも軍需に充当されました。
しかし、この巨額の借金はいずれにしても、返済が必要なものであり、初期に発行されたメフォ手形の償還期限(5年間)である1939年時点では国家財政は当に火の車ででした。
この国債の償還の為には、通貨発行を増大してハイパーインフレーションを起こすか、国債の最大の引受先である欧米の債権団から踏み倒す方法、つまり戦争の道でした。
又、戦争によって被占領国から財産を強奪すれば、債務償還できるといった考え方も可能なのです。
更に、国内産業を過剰なまでに保護した結果、ドイツ工業の国際競争力の低下も著しく、その結果として当然、外貨準備高の不足も危険な水準に達し、軍需生産に必要な鉄鉱石などの資源の購入にも支障をきたしはじめていました。
続く・・・
スポンサーサイト
コメント