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2011/12/17

人類の軌跡その265:伝記の陰の真実その③

<ジョージ・ワシントンは桜の木を切り倒した>

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 6歳の時、未来のアメリカ合衆国初代大統領は、父の大事な桜の木を切り倒した為に叱責されていました。
「僕には嘘は言えません」と父に告白します。
「僕が斧で切り倒しました」

 少年ワシントンの告白は、子供らしい悪戯と正直さが融合した、魅力的なエピソードなので、アメリカ史上最も有名な事件の一つと成りました。
此処には、大指導者の少年時代に似つかわしい、率直な性格が表れています。

 しかし、ワシントンの少年時代に関しては、殆んど何も判明していません。
説教師メイスン・ウォームズが書いた最古の伝記でも、少年時代に関す記述は、僅かに1ページなのです。

 大統領の死の翌年、1800年に出版された「ジョージ・ワシントンの生涯」初版には、桜の木の故事に関する記述は存在しません。
後に重版される段階で、ジョージ少年が手斧で悪さをした話を始め、大量の挿話が新たに付け加えられたのです。

 ウォームズは、問題の話をワシントン家と親しく交際していた、匿名の老婦人に聞いたと主張していました。
しかしながら、この筆者は、自分の著作に「伝記的秘話」を創作する、時には自分の書いた、全く別の人物の伝記から幾つかの話を、転用する癖があるので有名でした。

 後年、桜の木の話も、その一つであると言明した訳では在りませんが、ウォームズ自身創作を書き加えた事を認めています。
ペンシルバニア州の建設者である「ウィリアム・ペンの生涯」では、彼はネイティブアメリカンと移住民が協定を結んだ話を創造し、条文の引用迄書いていますが、現実には、その様な協定は存在していません。

 ウォームズの書いたワシントン伝は19世紀中に70版を重ね、桜の木の話は、アメリカの民間伝承として、広く海外にも広まりましたが、現在の伝記作家達は、この話を史実と認めず、全く記述から排除しています。

続く・・・


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