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2012/07/31

人類の軌跡その440:大英帝国③

<19世紀後半のイギリスその③>

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アイルランド西部キャプチャ

◎アイルランド問題

 海外に植民地を数多く保養するイギリスですが、最初の植民地といえるのがアイルランドでした。
16世紀からイギリスに侵略され、ピューリタン革命の時にはクロムウェルにより土地を没収され、アイルランド人農民はイギリス人に搾取される小作人に成っていました。
アイルランド人は、民族的にはゲルマン人よりも古くからヨーロッパに居住したケルト人です。
言語もアイルランド語で英語では無く、又、宗教はカトリックが大多数を占め、これ等の違いは、私達日本人からは理解し難いのですが、イギリス人にとっては大きな違いで、アイルランド人を差別し続けていました。

 イギリスに征服された後も、アイルランドには形だけの議会が存在したのですが、此れが1801年にイギリス議会に併合され、これ以降、イギリスの正式国名は、グレート・ブリテン・アンド・アイルランド連合王国と云い、略して連合王国、ユナイテッド・キングダム(U.K.)です。

 併合された結果、アイルランドがイングランドと平等に成った訳では無く、アイルランド人小作農への迫害は続きました。
その中で、オコンネル等の運動によって1829年にはカトリック教徒解放法が制定されて、カトリックが大多数を占める、アイルランド人に対する宗教上の差別は法律上、廃止されたのですが、依然その生活状態は改善されません。

 1840年代にジャガイモ飢饉と名づけられた大規模な飢饉がアイルランドを襲います。
アイルランド人の主食はジャガイモで、ジャガイモの別名は「貧者のパン」と云います。
痩せた土地でも栽培可能で、収穫も簡単、脱穀や製粉をせずにそのまま茹でて直ぐに食べる事が出来ます。
本来はアメリカ大陸原産ですが、16世紀末にアイルランドに伝わると、直ぐに全土に広がり主食に成りました。

 ところが、このジャガイモの伝染病が大流行し、収穫が激減、それがジャガイモ飢饉です。
1845年から数年間に100万人が餓死、80万人が飢えから逃れて北アメリカに移住しました。
飢饉前のアイルランド人口は850万人程ですから、ものすごい被害です。

 35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディの、曽祖父がジャガイモ飢饉から逃れてアメリカに渡って来た事は有名なお話で、ウォルト・ディズニーも曽祖父の代に、ジャガイモ飢饉を逃れてアメリカに渡っています。
ディズニーの創ったキャラクターの名前ミッキーは、アイルランド人によくある名前マイケルの愛称で、因みに、アメリカでは、20世紀前半迄は、貧しいアイルランド系移民を見下す時にミッキーと呼んでいましたが、ミッキー・マウスが国民的人気者になってから、見下すニュアンスは無くなったそうです。

 その後もアイルランド人農民の一揆、自治や独立を求める運動は活発化します。
有名なのがボイコット運動で、ボイコットは、イギリス人地主に雇われていた実在の土地管理人の名前でした。
このボイコット氏が、法外な小作料の取り立てを実行し、激怒した小作人達が、ボイコット氏の家に配達される郵便物や食料品を実力行使でストップさせて困らせました。
これが、アイルランド全土に、小作人の闘争方法として広がり、不買運動や集会等への不参加運動と云う意味で現在も使われます。
 
 イギリス側も、アイルランド人の反イギリス闘争が過激に成らない様、1870年アイルランド土地法等で、アイルランド人小作人の生活安定化を目指します。
アイルランド側の政治運動としては、1905年に結成されたシン=フェイン党が有名で、この政党は急進的独立運動を進めていきました。

19世紀後半のイギリス、終わり・・・
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