fc2ブログ
2013/03/06

歴史のお話その55:ローマ帝國の発展⑦

<ローマ⑦>

img_148842_18037372_1.jpg
「スパルタカス」ユニバーサル・ピクチャーズ 1960年 主演カーク・ダグラス

4、スパルタクスの反乱その2

 当時ローマは最悪の状況にありました。
同盟市戦争の傷も癒えぬまま、西はセルトリウスのイスパニアの反乱、東はミトリダテス戦争の真っ只中で、有能な将軍であるポンペイウスはイスパニア、ルクルスは小アジアに派遣されローマ本国にはまともな指揮官がいない状況でした。

 スパルタクス軍の強みは、中核となる戦力が白兵戦のプロである剣奴だということです。
反乱軍は途中で、逃げ出してきた奴隷を加えながら北上、アルプスを越え脱出を試みます。
ローマ元老院は二人の執政官に2個軍団(12000名)を与え、これを迎撃しました。
しかし、スパルタクスは二つの軍に連携する暇をあたえず各個撃破し、もはや反乱軍の前にはアルプスの天険があるのみでした。

 大勢力になったスパルタクス達の奴隷反乱軍はイタリア半島を北上します。
食糧は略奪で確保されました。
途中の都市を攻略し金持ち、貴族の財産や食糧を略奪しながら移動したのです。

 スパルタクスの目的は、故郷へ還る事で、彼自身は今のブルガリア付近の出身と思われ、故郷には家族がいたのかも知れません。
他の奴隷達もローマ領の北方から来た者が多かった様子で、北へ向かってローマ領からの脱出を試みたと考えられます。

 ところが彼らは、アルプスの麓迄行くのですが、そこでUターンしてしまいます。
なぜアルプス越えをしなかったのかは、現在も謎です。
アルプスを越えれば、ローマ領から出られる訳ですから不思議な行動です。
この行動には、現在も諸説が在り、推測の域を出ていません。
現実問題として10万人もの人間を引き連れて、実際にアルプスを越えられるとは、スパルタクスが思わなかったのでしょう。
スパルタクスや他の剣奴達だけなら、肉体頑強なのでアルプスを越えられたでしょうが、彼らを頼って逃げてきた奴隷達はどうなのでしょうか?
老人や、病人、女子供も当然居た筈で、その様な者達はかなりの確率で落伍して死んで行く筈です。
リーダーの判断としては、アルプスを目の前にして引き返さざるを得なかったと思います。

 今度は又、貴族の物資を略奪しながらイタリア半島を南下しますが、彼らはローマ帝国領土からの脱出を諦めた訳では在りませんでした。
当時イタリア半島周辺の海域では、海賊が結構出没しており、スパルタクスはその海賊と連絡を取り合い、イタリア半島南端に海賊船が迎えに来て、彼等をシチリア島に運ぶ段取りになっていた様です。
スパルタクスが略奪したのは、食料だけでは無く、高価な品物や財宝も手元に在る訳ですから、海賊に支払う報酬も心配ない筈でした。

 ところがスパルタクス一行がイタリア半島の先端近く迄到着した時、そこに姿を現したのはローマ帝国の大軍でした。
その軍団を率いたのは、一度は反乱軍に敗れたクラッススでしたが、ローマの威信にかけても負けられない状況でしたので、次第に反乱軍を追い詰めていきます。
それでもスパルタクス軍は一度は、シチリアを望むメッシーナ海峡まで達しますが、幸運に恵まれず、イスパニアでセルトリウスの乱を鎮圧したポンペイウス軍、トラキアを平定したルクルス軍が相次いでイタリア半島に上陸し、三方から反乱軍を包囲する形となりました。

 絶望的状況の中でスパルタクスは、南イタリア、ルカニアの地でクラッスス軍に最後の決戦を挑みます。
もちろん死を決しての戦いでした。
戦闘は壮絶を極め、10万の反乱軍はローマ帝国軍に殲滅され、降伏しても死罪になるのは明らかでした。
10万人がすべて兵士では無く、女性や子供、老人も多かったと思います。
スパルタクス自身も戦火の中で戦死し、死骸はついに発見できませんでした。
降伏した6000名の捕虜も悲惨な運命をたどります。
6000名は磔(はりつけ・磔刑)にされ、ローマ市から南方に続くアッピア街道の両側に十字架が何キロも連なり、奴隷達の呻き声が何日も聞こえたと記録されています。
しかし、その後ローマでは奴隷に対する待遇が緩和されました。

 ところで、鎮圧に不手際の多かったクラッススより、応援に駆けつけたポンペイウスの軍功が上と判断されたためクラッススは大いに不満を持ち、このコンプレックスが後年パルティア遠征に向かい戦死する遠因となったのです。
 
 スパルタクスの話しが長くなってしまいましたが、この時期のローマ帝国内部では、将軍同士の内乱、同盟市の反乱、奴隷反乱、元老院の指導力の低下等、混乱が続いた時期でした。
ローマがその現状に適合した政治制度を見つける迄、もうしばらく混乱は続きます。

ローマ・続く・・・
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント