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2013/04/17

歴史のお話その91:キリスト教の成立⑤

<キリスト教の成立⑤>

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イエスの病癒し

3、イエスの教えその3

 病癒しの中に気に成る事項が、ゲラサ人の病人を治す話です。
この人物は頭に変調をきたして墓場で、裸になって叫び続けていました。
周りの人が縛りつけても直ぐに引きちぎって、石で自分の身体を傷つけたりもします。
イエスはゲラサ人の土地にやって来て、彼に憑いている悪霊を退散させるのですが、この時に悪霊に名を尋ねと悪霊が名乗るのです。
その名が「レギオン」(怪獣の名前では無く)、実はレギオンはローマ軍団です。
これは単なる病癒しの話を越えた何かを暗示しており、イエスの物語はローマの支配と無関係では無く、イエスが治した多くの病人の病気とは実のところ何だったのか、と考えてしまいます。

 イエスはユダヤ教の解釈を改め、病癒しによって、短い間に評判が上がり多くの支持者を集め、彼の行く処には人々が群がるように成りました。
イエスこそが待ち望んでいた救世主だと考える人々も多く成ってきました。

 イエスが評判になると、ユダヤ教の指導者たちは面白くないのは当然で、なんとかイエスの信用を落として、あわよくばイエスの落ち度をとらえて逮捕処刑しようと考えます。
ユダヤ教の指導者達の配下の者たちが、イエスの身辺に現れて彼の言動を探り、いろいろな罠を掛るように成りました。

 聖書に姦淫する女の話が出てきます。
ある時その配下の連中が、イエスの前に一人の女を連れてきます。
その女は姦淫している現場を見つかり、夫がいながら他の男性と関係を結んでいました。
これは当然戒律違反で、死刑に相当し姦淫した女は石打の刑と成り皆に石をぶつけられて殺される決まりでした。

 彼等はイエスに向かって言います。
「イエスよ、貴女はこの女をどうするのか。」
勿論これは罠で、イエスが若しこの女を許すべきだと言えば、戒律破りを堂々と認めることに相当します。
姦淫は日本でも戦前ならば、犯罪にあたる行為で、これを認めた場合、イエスは無法者だと触れ回られことに成ります。
若し、「許さない、死刑だ」と言えば、イエスの言動に励まされてきた多くの貧しい者、虐げられた者達を裏切ることに成る訳です。
「イエスは口では私達の味方みたいに言っているけど、いざとなれば戒律を守れと言うのか」と思われることでしょう。
どちらにしてもイエスは信用を落とすことになる、巧妙な罠です。

 この時イエスはこう言ました。
「貴方達の中で今迄、罪を犯したことが無い物が居ればこの女をぶちなさい。」
女の周りには石を持った男達が、撃ち殺してやろうと取り囲んでいましたが、イエスの言葉を聞いて、一人、また一人と石を置いてそこから立ち去って行きました。
実に感動的な場面で、しかも、イエスの機知も伝わって来ます。
客観的に戒律が正しいか否かについて、イエスは言わず「貴方はどうなのか。」と問う。
それを周囲の全員に突きつけたのでした。

 もう一つ罠の話。
やはり配下の者がイエスに質問します。
「イエスよ、我々はローマ帝国に税を納めるべきか否か。」
イエスは貧しい者の味方で、収めなくても良いと言えば貧しい者達は喜ぶでしょうが、それはローマ帝国に対する明らかな反逆行為に相当し死刑にされても仕方が無いのです。
納めよといえば、支持者は失望することに成ります。
イエスは「コインを見せよ」、と言ってコインを手に取り、そして、質問したものに逆に質問する。「これは誰か」と。
ローマのコインには皇帝の肖像が刻まれており、配下の手先は答えます。
「カエサルだ。」
イエスは言います。
「カエサルのものはカエサルに返しなさい。神のものは神に返しなさい。」
税がどうのこうのという前に、貴方は神に対して正しい信仰を持っているのですか?
イエスは逆に配下の手先を遣り込めました。

 この様にイエスは、ユダヤ教指導者達の追及を切り抜けていきます。
しかし、彼がユダヤ教の在り方を批判するだけでなく、救世主としての評判が高くなってくると対立は徹底的に成りました。
ユダヤ教の保守的な指導者達は、是が非でもイエスを捕らえて処刑しようと考え、イエスに対する流言飛語も利用して評判を落とすことさえ行いました。

キリスト教の成立・続く・・・

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