2013/12/10

歴史のお話その279:語り継がれる伝説、伝承、物語66

<ドイツ兵を楽しませた謀略放送>

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 第二次世界大戦の間、ドイツ軍ラジオ放送局、グスターフ・ジークフリート・アインス(以下GSI)は、下級兵士の間で、格別の聴取率を誇っていました。
歯に衣を着せず、下級兵士の気持ちを代弁する独自の番組を放送していた為ですが、やがて、放送の言外の意味を論理的に解釈すると、意外な情報が入手できる事が解かった為でも有りました。

 例えば、「我々の勇敢な軍隊がロシア戦線で、凍死の危機に曝されている間に」不当な利益をむさぼる者を、激しく非難するキャンペーンをGSIが始めた時、兵士達には、「不当な利益」等どうでも良い事で、お陰で東部戦線の冬の厳しさを正確に知る事が出来たのでした。

 又、空襲で損害を受けた、ドイツ諸都市の市民を収容する施設の医師達の活躍を、報道した時も、兵士達はコレラやチフスの死者が週平均60名も出た事を知ったのです。

◎愛国心

 GSIの人気の元と成った明け透けな報道姿勢は、後に大西洋放送とカレー兵士放送に引き継がれ、何れも、ドイツ占領下のヨーロッパ、ドイツ進駐軍向けの放送局でしたが、その熱烈な愛国心は、時として指揮官達の頭痛の種と成りました。

 これらの放送局が、怒りを込めて報道した番組に、脱走兵のニュースが有りました。
祖国を捨てて中立国に逃げ込んだ、不届きな兵士の脱走方法を、番組は怒りと悲しみを込めて、事細かに放送しました。
当然、軍務を離れたいと常々思っていた兵士達は、更に故郷の町が連合軍側の爆撃で、被害を受けた事を知ると、放送で知った脱走方法を実際に応用して、私的な無断休暇を取得したのです。
しかも、放送局の伝える情報の正確さは、何時も前線に空輸されて来る「軍隊ニュース」で裏付けされていました。

◎虚実取り混ぜ

 しかし、これらのドイツ兵士向け放送は、実際にはドイツ軍の手で行われていた訳では無く、ラジオ放送も新聞も、共に連合軍情報部の智恵の産物と言えるものでした。
ラジオ放送の発信地は、イギリス本土で、強力な電波によって本物のドイツ軍放送を傍受不能にしていました。

 偽装放送が成功したのは、情報に虚実を程よく混ぜ合わせ事により、それが結果的に故郷を遠く離れた前線のドイツ兵士達の心理に、効果的な働きをしたのです。
ドイツ軍の本物の新聞に似せた「軍隊ニュース」は、イギリス軍軍用機が毎夜空輸して地上に落としましたが、此方もラジオ放送同様の編集方針を取っていたのです。

 ドイツ宣伝相ヨーゼフ・ゲッペルスは、偽りの情報効果に憂慮しましたが、情報活動家としての彼は、連合軍の戦術に賞賛を惜しまない訳にはいかず、彼は連合軍側にこの新聞を、英訳して脱走や破壊、敵前逃亡を勧める宣伝ビラを仕立てて、連合軍側の後方に投下したのでした。

続く・・・


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