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2014/01/27

歴史のお話その311:語り継がれる伝説、伝承、物語98

<シベリア出兵その②>

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シベリア出兵時のハバロフスク

◎兵士にとっての大義

 兵士は出兵目的を理解していたのでしょうか?
領土獲得が本意としても、事実を広言できる時代では既に無く、当然兵士は何も説明を受けていません。
多くは同盟、日本は連合国(当時イギリス、フランスはその様に呼称しましたが、日本、アメリカではあまり一般的では無く、アメリカは参戦が遅いから理解も出来ますが、日本に関しては、不可解です)の一部に属しており要請されたからだと受け取りました。
従って、シベリア出兵は他国の戦争で、これでは防衛戦争(敵国内で戦うにせよ)に比べ士気も上がりません。
問題として当時の日本軍はドイツ式の徴兵の軍隊で在り、会計上も外征の為、徴兵軍を使用すると特別の費用支出という認識が弱く成ります。

 イギリス、フランスは同盟、外征の為には志願兵の部隊又は、傭兵を使用しました。
志願と徴兵の2本立ての軍組織で在り、アメリカは現在でも外征には原則全員志願の海兵隊を第一義に使用します。一方、日本には徴兵軍しか存在せず、当初ハルビン特務機関は、この隘路を打開する為日本人義勇軍を編成しますが、失敗に終わります。

 シベリア出兵は、連合国の大義に従った出兵と大半の人間は理解し、領土獲得も地図獲得も徴兵軍を納得させる目的が欲しいが為の口実の様に思えます。
第1次大戦で、この様に抽象的な理由で参戦した国にイギリスが在り、イギリスはベルギーの中立侵犯を理由に参戦し、結果として100万人の戦死者を出し、戦後イギリスには絶対平和主義が流行しましたが、被害の少ない日本には、その様な世論も起こりませんでした。
同盟を理由として参戦する事は、普通次の戦争でその同盟国が味方と成り、戦う事を期待します。
ところがシベリア出兵以降、極東で唯一の大国と成った日本に、同盟国は不必要と認識され、本来最大の目的、連合国の一員としての行動は忘れ去られ、また将来の味方として期待する事も放棄したのでした。
現在でも他国の紛争に巻き込まれるな、という声が存在しますが、その声に従うと双務的な軍事同盟や中立保障条約を全て否定する事に成ります。
その事実を如実に表すのが、シベリア出兵が終了(同時にワシントン会議)後、1936年の日独防共協定成立の間であると思います。

 シベリア出兵は日本人側で無く、ロシア人側に有利に働きました。
そして軍人も日本の歴史家も取り上げず、この出兵で貢献できた事は、この4年3ヶ月シベリアに飢饉が生じなかった事でした。
この全期間を通じて、ヨーロッパロシアは人肉市場ができるまでの食料不足に喘ぎ、少なくとも1000万人以上が1919年から1925年迄の間に餓死しました。
この事態は、ヨーロッパロシアの南部穀倉地帯で発生し、この事実は不思議に思えますが、飢饉は穀倉地帯の方が発生しやすく、日本でも米騒動は富山県から発生しました。
歴史的に見れば、飢饉になると首都等には、強制力をもって穀物が集約され、また首都に住む人間は流通ルートを熟知しており購買力が高く、穀倉地帯の周辺の都市にはそのいずれもが欠落しています。

 シベリアの食料は、満州を通過して得ており、東支鉄道は白軍が一貫して保持し、その先は南満州鉄道に接続しています。
日本軍の補給もボルシェビキの協力(!)も在り順調で、食料はシベリア全土でほぼ円滑に流通し、また治安も悪くは無く、結果として白系の人々の脱出に大いに貢献しました。
帝政ロシア軍の将校で白軍に加わった人々の60%はシベリアを経由し脱出し、またその後もパリの将校団がボルシェビキのスパイと化した事実と比較して、誇りを持って生きる環境は、極東の方により存在したのでしょう。
多くのロシア人将校、貴族は上海へと向かい、その後渡米しました。
日本軍が撤退した後、シベリアはラーゲリ(強制収容所)と軍事基地の集積地へと変貌していきます。

 この戦いに参加した日本兵は延べ約22万人、参加した兵士は参戦の理由に納得がいかなかったと、戦後も長く語り継がれます。
日本軍の兵士は国の要請に従い、それが義務だと思い戦い、或る者は極北の地に倒れ、彼らはおそらく第1次大戦で最後に倒れた兵士でした。
彼らを描写する言葉は、全てが始まった時1914年9月ロイドジョージの演説がふさわしいと思われます。
「国家にとって必要な永久に続く偉大なこと、それは平和の時代には忘れられている。名誉、義務、愛国心だ。輝く白衣に包まれて、犠牲の偉大な尖塔は遥かなる、天空を指している。」
そして4年3ヶ月は、シベリアが流刑地でなかった短い一瞬でも在りました。

続く・・・
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