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2017/02/07

歴史を歩く141

33 19世紀のヨーロッパ文化

1文学

 17世紀のフランスに始まった古典主義は、18世紀中葉から19世紀初頭では、ドイツで盛んとなりました。
ドイツでは、1770年代から、世俗的な道徳や因襲を否定し、個性や感情と自然を尊重する「疾風怒濤(シュトルム・ウント・ドランク:Sturm und Drang)」と呼ばれる革新的な文学運動が起こり、若き日のゲーテやシラーが中心となったこの運動は10年程で衰退しましたが、ゲーテの『若きヴェルテルの悩み』(1774年)やシラーの『群盗』は疾風怒濤期を代表する作品です。

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ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe、1749年8月28日 - 1832年3月22日)

 ゲーテ(1749年~1832年)は、「疾風怒濤」の文学運動の中心人物で、後にシラーと共にドイツ古典主義文学を大成しました。
晩年の作品『ファウスト』はゲーテの古典主義の代表作とされている一方で、ゲーテはヴァイマル(ワイマール)公国の宰相を務める等政治家としても活躍したのでした。

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ヨーハン・クリストフ・フリードリヒ・フォン・シラー(Johann Christoph Friedrich von Schiller、1759年11月10日 - 1805年5月9日)

 シラー(1759年~1805年)もゲーテと並んで疾風怒濤期の代表的な作家であり、後にはゲーテと共にドイツ古典主義文学を大成しました。
彼は歴史研究者でもあり、史劇に優れた作品を残します。
『ヴァレンシュタイン』・『オルレアンの少女』・『ヴィルヘルム・テル』等三部作の史劇は、彼の代表的な作品です。
尚、ヴァレンシュタインは三十年戦争で活躍した傭兵隊長、オルレアンの少女とは百年戦争の末期に活躍したフランスの愛国的少女ジャンヌ・ダルクであり、ヴィルヘルム・テルはスイスの独立運動で活躍した伝説的英雄です。

 18世紀末から19世紀前半にかけては古典主義に対抗してロマン主義が現れて盛んとなりました。ロマン主義は、当時盛んであった啓蒙主義の主知主義に反発し、個性や感情を重んじ、歴史や民族文化の伝統を尊び、中世を讃美します。
ドイツのハイネ、イギリスのバイロン、フランスのユーゴ等はロマン主義を代表する詩人、作家です。

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クリスティアン・ヨハン・ハインリヒ・ハイネ(Christian Johann Heinrich Heine, 1797年12月13日 - 1856年2月17日)

 ハイネ(1797年~1856年)は、ユダヤ系ドイツ人で、ウィーン体制下で自由主義を唱え、七月革命に刺激されてパリに亡命し、マルクス等と交わって社会主義に傾倒し、革命詩人と呼ばれました。

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第6代バイロン男爵ジョージ・ゴードン・バイロン(George Gordon Byron, 6th Baron Byron, 1788年1月22日 - 1824年4月19日)

 バイロン(1788年~1824年)は、『チャイルド・ハロルドの遍歴』で有名となり、後にギリシアの独立戦争に義勇兵として参加するためにギリシアに渡り、客死しています。

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ヴィクトル・マリー・ユーゴー(Victor, Marie Hugo、1802年2月26日 - 1885年5月22日)

 ユーゴー(1802年~85年)は、当初詩人として知られ、後に劇作家・小説家として名声を博しました。
彼は次第に政治に関心を寄せ、二月革命後は共和主義者として議員に選出され、ナポレオン3世が政権を握ると反対の立場をとって国外追放になり、英仏海峡の小島で8年間に及ぶ亡命生活を送り(1852年~70年)、ここで大作『レ・ミゼラブル』(1862年)を完成させました。
ナポレオン3世失脚後はパリに戻って上院議員にも選出されています。

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グリム兄弟、左・ヴィルヘルム、右:ヤーコプ。
ヤーコプ・ルートヴィヒ・カール・グリム(Jacob Ludwig Karl Grimm、1785年1月4日 - 1863年9月20日)
ヴィルヘルム・カール・グリム( Wilhelm Karl Grimm、1786年2月24日 - 1859年12月16日)


 彼等の他にロマン主義を代表する詩人・作家を上げると、ドイツでは初期ロマン派の詩人であるノヴァーリス(1772年~1801年)、ロマン主義運動の理論家シュレーゲル兄弟(兄1767年~1845年、弟1772年~1829年)、『子供と家庭のための童話』(グリム童話集)で有名なグリム兄弟(兄1785年~1863年、弟1786年~1859年)等が居ます。


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ウィリアム・ワーズワース(Sir William Wordsworth, 1770年4月7日 - 1850年4月23日)

 フランスでは、ネッケルの娘で熱烈な自由主義者でナポレオンに追われて各地に亡命したスタール夫人(1766年~1817年)、ナポレオンと復古王政に仕えた政治家でもあるシャトーブリアン(1768年~1848年)等、イギリスでは湖畔の詩人と呼ばれたワーズワース(1770年~1850年)、『湖上の美人』や歴史小説『アイヴァンホー』で有名なスコット(1771年~1832年)等、そしてロシアでは、ロシア国民文学の創始者で『オネーギン』や『大尉の娘』を書いたプーシキン(1799年~1837年)等を上げることが出来ます。

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ナサニエル・ホーソーン(ナザニエル・ホーソーン、Nathaniel Hawthorne 1804年7月4日 – 1864年5月19日)

 アメリカでは、アメリカの知的独立宣言とされる『アメリカの学者』と題する講演を行ったエマーソン(1803年~82年)、ピューリタン文学者で代表作『緋文字』で知られるホーソン(1804年~64年)、詩集『草の葉』でアメリカ民主主義を讃美したホイットマン(1819年~92年)等が活躍しました。

 19世紀後半になると、資本主義が発達し、市民階級の力が大きくなると共に労働者階級の悲惨な生活が社会問題となります。
又科学・技術の急速な発達が文学にも影響を及ぼし、非現実的なロマン主義に対する反動として、社会や人間を客観的にありのままに描こうとする写実主義・自然主義がフランスで芽生えます。

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スタンダール(Stendhal、1783年1月23日 - 1842年3月23日)本名マリ・アンリ・ベール(Marie Henri Beyle)

 フランスの写実主義を代表する作家はスタンダール、バルザック、フロベール等を上げる事ができます。
ナポレオンのロシア遠征にも従軍したスタンダール(1783年~1842年)は『赤と黒』、『パルムの僧院』等によってフランス写実主義の先駆的作家とされています。

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オノレ・ド・バルザック(Honoré de Balzac 1799年5月20日 - 1850年8月18日)

バルザック(1799年~1850年)は『人間喜劇』(約90の短編小説の総称)で市民社会と小市民の姿を描きだし、フロベール(1821年~80年)は『ボヴァリー夫人』(1857年)によってフランス写実主義文学を確立しました。
フランスに起こった写実主義は、その後イギリス、ドイツ、ロシアに広まっていきます。

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チャールズ・ジョン・ハファム・ディケンズ(Charles John Huffam Dickens, 1812年2月7日 - 1870年6月9日)

 イギリスでは、『虚栄の市』で19世紀初頭のイギリス上流・中流社会を描いて諷刺したサッカレー(1811年~63年)、『オリヴァー・トゥイスト』等下層社会に題材をとり下層階級を同情的に描いたディケンズ(1812年~70年)等が代表的な作家です。
尚、ディケンズの『二都物語』はフランス革命を背景にパリとロンドンを舞台とする優れた歴史小説で彼の代表作の一つとされています。

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イワン・セルゲーエヴィチ・ツルゲーネフ(Ивáн Серге́евич Турге́нев、1818年11月9日 - 1883年9月3日)

 ロシアでは、農奴制下のロシアの頽廃、矛盾、不正を描いたゴーゴリ(1809年~52年)が『死せる魂』等を著して写実主義を確立し、トゥルゲーネフ(1818年~83年)は、『父と子』(1862年)で農奴解放後のロシア社会及び新旧世代の対立とニヒリスト(虚無主義者)を描いています。

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フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(Фёдор Миха́йлович Достое́вский;1821年11月11日 - 1881年2月9日)

 ドストエフスキー(1821年~81年)は、社会主義を研究するサークルに関係してシベリアに流刑となり4年間囚人生活を送りますが、この間にギリシア正教に心の拠り所を求め、その後は革命に反対し、以後、大作『罪と罰』(1866年)・『カラマーゾフの兄弟』(1880年)等で帝政末期のロシア社会の諸相を鋭く浮き彫りにし、人間の魂の苦悩と救済を描いています。

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レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ(Лев Николаевич Толстой, 1828年9月9日- 1910年11月20日)

 トルストイ(1828年~1910年)は、古い貴族の家に生まれ、軍隊に入ってクリミア戦争に従軍した経験を持ち、軍務を退いた後は自分の領地で地主として暮らし、農民の教育にも務めました。
ナポレオンのロシア遠征を背景にロシア貴族の生活を描いた歴史小説の『戦争と平和』(1869年)や1860年代のロシア貴族社会を背景に人妻アンナの悲恋を描いた『アンナ・カレーニナ』(1877年)で世界的な名声を博し、晩年には『復活』等、宗教的な人道主義の作品を多く表しています。

 1870年代以後は写実主義を更に強調し、現実を実験科学的に捉えて表現する自然主義が盛んと成っていきました。

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エミール・フランソワ・ゾラ(Émile François Zola、1840年4月2日 - 1902年9月29日)

 フランスの自然主義文学を代表する作家ゾラ(1840年~1902年)は、「科学者が実験室で観察するように冷静に人間及び社会を観察し、遺伝と環境によって形成される人間を描く」事を主張し、『ナナ』、『居酒屋』等でパリの労働者社会の悲惨な生活を描き、又ゾラはドレフュス事件(1894年~99年)で被告のドレフュスの無罪を主張し、「私は弾劾する」の論陣を張っています。

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ギ・ド・モーパッサン(アンリ・ルネ・アルベール・ギ・ド・モーパッサン(Henri René Albert Guy de Maupassant、1850年8月5日 - 1893年7月6日)

 ゾラと並んでフランス自然主義文学を代表するモーパッサン(1850年~93年)は、『女の一生』(1883年)で有名ですが、彼には短編・中編の方が多く、短編小説形式の完成者とされています。

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ヘンリック(ヘンリク)・イプセン(Henrik Johan Ibsen、1828年3月20日 - 1906年5月23日)

 女主人公ノラを中心に女性解放を主題とした戯曲『人形の家』を書いたノルウェーの劇作家イプセン(1828年~1906年)やスウェーデンのストリンドベリ(1849年~1912年)等も自然主義の代表的な作家として知られています。

ジョークは如何?

西側のおとぎ話は「むかし、むかし、あるところに・・・」で始まる

東側のおとぎ話は「やがて、いつかは・・・」で始まる


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ジロくんは2月6日で11歳に成りました。

続く・・・



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コメント

非公開コメント

秋葉奈津子様 こんばんは。

朝出勤途中に北の山々を見ると、
白く輝いていました。
大文字山にも雪が積もっています。
今年は雪が多いですね。

ジロ君11歳ですか。
かわいいですね。

私も犬が好きですが、
団地に住んでいますので残念ながら、
飼うことが出来ません。

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葉山左京様、おはようございます。

今週末は大荒れのお天気に成りそうです。
北九州も金曜日以降3日連続で雪の予報が出ました。
昨日は、穏やかな良いお天気に恵まれ、桜や銀杏の木々も新芽の膨らみが、はっきりと判る程になっています。
今回の寒波が、一日も早く過ぎる事を願っています。

ジロくんへのコメントありがとうございます。
買ったばかりのデジカメなので、未だ操作に慣れていません。
撮影場所は、氏神様の境内です。
私の元に来て、病気らしい病気も一切無く、11歳を迎えました。
これからも元気に暮らして欲しい気持ちでいっぱいです。

秋葉奈津子様 こんばんは。

寒さが厳しいですね。
早く寒さから逃れたいですね。

文学の歴史、みんな有名な人ばかりですが、
それぞれの本全世界の人が読んでいることでしょう。
私もすべてではありませんが、一生懸命読んだ記憶があります。

ジロ君健康で長生きしてくれるといいですね!

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葉山左京様、おはようございます。

天気予報通り、昨日の夕方から雨模様。
今も弱い雨が降っていますが、気温は高く寒さを感じません。
明日、明後日は雪との事なので、出勤をはじめ、色々と心配です。
積もらない事を願います。

文学の世界を列記してみると、私達が普段読んでいる作品の殆んどが、18世紀から19世紀に書かれたことに気づきます。
素晴らしい時代だったと改めて感心します。

ジロくんの友達も昨年から今年にかけて、他界したワンくんが多いです。
ジロくんも友達に会っていた公園や道では、時々寂しそうに、広くなった空間を眺めています。

秋葉奈津子様 こんばんは。

寒さがこんなに厳しくなるとは思いませんでした。
15日くらいまではこの寒さが続くようですね。
この寒さには降参です。

仕事場でも若い人たちが寒い寒いと連発です。
ビル自体には暖房が入っているのですが。

寒さに負けずに頑張らなければと、
思います。

葉山左京様、おはようございます。

昨日の夕方から、北西の強い風が吹き、時々小雪がちらつきました。
今日の明方は、うっすらと雪化粧です。
今は時折、雲間から陽が射していますが、雪も時々降っています。
明日、明後日と雪が続く予報なので、憂鬱です。

勤務先は関門海峡に近いので、冬は特に寒さが厳しいです。
昨日夕方の気温は5度ですが、強い風が吹くと体感温度は、0度以下に下がり、凍える様な寒さです。
室内との温度差も大きく、体に堪えますね。