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2009/01/25

ギリシヤ神話XI・冬のある理由そのⅡ

冬のある理由そのⅡ

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 やっとの事で太陽神ヘリオスの住む、最果ての地にたどり着いたデメテルとヘカテー。
二人がヘリオスのもとに近づくと、ヘルメスは、二人にゆっくりと話し始めました。

「おぁ、レイアーの娘のデメテルよ、私は貴女がここを訪れるであるうことは、私には解っていましたよ。・・・さて、何から話してよいのやら・・・。」

「それでは話しましょう。貴女の娘であるペルセポネは、貴女の兄君にも当たる冥界の王ハデスによって連れ去られてしまったのです。これはゼウス大神も黙認の事、致し方ありますまい・・・。しかし、どうか酷くお嘆きにならないでください。冥界の主は、決して彼女に恥ずかしくないお相手でございます・・・。誉れ高きあなた方のご兄弟であり、また世界の三つ一の王なのですから。」

 ヘリオスは、こう言うと少し決まりの悪そうな素振りで、逃げるように中空高く飛んでいきました。

 一方デメテルは、このヘリオスの慰めも心には届かず、ただ呆然となって立ち尽くすばかりです。 そして、それは次第に怒りへと形を変えていき、ペルセポネの誘拐にかかわった者、特にゼウスに対して、激しい恨みを持つようになったのです。
デメテルは、オリンポスにも上がる事もなく、姿を窶して、人間界をさまよい続けたのでした。

 彼女の負った心の傷は、時が癒す事はありませんでした。
逆に、時が経てば経つほど、あの無情な神々に対する怒りが無限にこみ上げてきます。
彼女の思いは頂点に達し、終には何とかして奴らに思い知らせてやろうと考えるようになりました。

 彼女は恐ろしい復讐に出たのです。
作物の実りを操ることのできるデメテルは、一切の種子の発芽を許しませんでした。
このむなしい思いを皆にも知らせるために、地上に寒波を作り出しました。
それ以来畑では、農作業の甲斐なく、たくさんの麦が無駄にばら撒かれました。
こうして多くの人間が死に行き、オリンポスの神々も、人間からの奉げ物を無くしたのです。

 この事態の急を察したゼウスは、まず虹の女神イーリスをデメテルの元に送り、説得に努めさせました。
しかしまったく甲斐はなく、この後もゼウスの命で様々な神が、あらゆる貢物を持ってデメテルを訪ねますが、彼女はガンともしません。
とうとう根負けしたゼウスは、ヘルメスを冥界に送り、ペルセポネを連れ戻す事をデメテルに約束しました。

 ヘルメスは冥府の王に事の事情を話し、ペルセポネを地上に返すようにハデスにせまりました。
始めは渋っていたハデスですが、ゼウスの命令なら仕方ないと、ペルセポネを地上に戻す約束をしたのです。
ハデスは、ペルセポネに事を話し、早速用意するように言いました。
それを聞いて大喜びするペルセポネにハデスは、「せめてもの冥界の思い出に・・・」と、とても甘そうなザクロの実をペルセポネに与えました。
母に遭える嬉しさのためか、ペルセポネにはそのザクロが、ひときわ甘く感じられました。

 ペルセポネは早速地上への道を上がって行き、ついにデメテルの待つ冥府の入り口へとたどりときました。
久方ぶりの再会を果たした二人は、まるで狂わんばかりに抱擁をし、再会を喜び合いました。

 これにより頑なな、デメテルの心も溶かされ、畑ではいっせいに麦が芽を出しました。
暫く抱合っていたデメテルですが、急に何と無い心配に、胸騒ぎを覚えました。
それで、ペルセポネの顔をしげしげと見つめ、こう言いました。

「ペルセポネよ。あなたはもしかして、冥界で何か食べ物を口にしませんでしたか?答えてください。もし冥界で何かを食べてしまったのなら、冥界の掟としてあなたは冥界にふたたび帰らなければなりません。・・・あぁ、ペルセポネよ。さあ、食べてないといっておくれ。」

 その言葉を聞いたペルセポネの顔からは、さっきまでの笑みは消え、血の気も引いて、まさに冥府の女王の顔のようになっていました。
この顔色を見てそれを察し、ふたたびペルセポネを強く抱きしめました。

 一方、事を無難に済ませようとしたゼウスは、彼らの母であるレイアーをデメテルの許に遣わし、神々の仲間に戻ってくる事を勧めさせ、彼女に望むほどの栄誉を与える事を約束させます。
しかし、それでも余り好い顔をしないデメテルに、ゼウスは、特例としてペルセポネを一年の三分の一を冥界で過ごさなければならないが、残りは地上で暮らせるように計らいました。

 流石にデメテルも諦め、その条件を飲む事にしました。
こうして、ペルセポネは、一年の三分の二を母と共に暮らせるようになりました。
しかし、ペルセポネのいない残りの月は、寂しさのあまりデメテルの心も凍りつきました。

そしてその時期は、草木も生えず、後に”冬”と呼ばれるようになったのです。
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