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2009/01/31

ギリシア神話ⅩⅦ・プレイアス達

プレイアス達

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<青き輝きをまとう姉妹星>

  寒気に凍てつく冬の夜空は、黒々と澄み渡った背景に無数の輝星が散らばってとても華やかなものです。
長く屋外に出るのは辛い季節ですが、恐らく1年の内で最も眺め甲斐のある夜空ではないでしょうか。

  そんな冬の代表的星座の1つに牡牛座があります。
神々の王ゼウスが、フェニキアの王女エウロペをさらう時に、変身した雄牛として有名な星座ですが、視力の良い人ならその牛の肩先に6個ほどの小さな星が寄り集まっているのが見えるでしょう。
日本では「昴(すばる)」の名で知られているプレヤデス星団です。

  誕生後まだ数千万年という若さで、母体である星間ガスに包まれたまま潤んだような蒼白の光を放っている非常に美しい星の群れです。
天体写真をご覧になれば、正に天界の至宝とも言うべき美観にきっと息を呑まれる事でしょう。
ギリシア人達は、この素晴らしい星団を、仲睦まじい7人姉妹の女神プレイアス達が昇天した姿であると考えました。
初々しい煌きは、確かにうら若き女神の化身に似つかわしいものがあります。
 
<壮大なる逃走劇>

  プレイアス達は、天空を支える巨神アトラスとオケアニスたちの1人プレイオネの間に生まれた娘達でした。
名前はそれぞれマイア・エレクトラ・タユゲテ・ケライノ・アルキュオネ・ステロペ・メロペ。
何れも、母に似て大変愛らしい女神達です。

  最初は処女神アルテミスに侍女として仕えていましたが、やがてその美貌のために男達に目をつけられてしまいました。
7人の中でも、最も美しい長女マイアが、ゼウスと臥所を共にして、伝令神ヘルメスを生んだことは有名です。
又他の5人の姉妹達もそれぞれゼウス・ポセイドン・アレスらの愛人となり子を生みました。
只、1人メロペだけは男神ではなく人間の男シシュポスの妻となり、キマイラ退治で有名な英雄ベレロポンの父となるグラウコスを生みました。
7人とも男と交わりを持った時点でアルテミスのお伴からは外れたものと思われます。

  ある日、母のプレイオネと一緒に森の中で踊っているところを美男の狩人オリオンに目撃されたプレイアス達は、女好きな彼に追い回される羽目になってしまいました。
何と7年(あるいは5年)もの長きに渡って逃げ回った末、嘗ての主人アルテミスにばったり行き会ったので、「女神様、お助け下さい! しつこい男が追いかけてきます!」と嘆願すると、女神はこれに快く応じて彼女たちを純白の鳩に変え、天に放ってくれました。
更にこれを迎え入れたゼウスが彼女達を星に変え、姉妹仲良く夜空に輝くように計らったのだといわれます。

  しかしながら、その後オリオンもアルテミスとゼウスによって星座にされ、しかもプレヤデス星団の属する牡牛座のすぐ隣に配置されたため、哀れにもプレイアス達は未だに安息を得られず、好き心を再燃させたオリオンに追いかけられ続けています。
ゼウスももう少し配置場所を考えてやればよいものを、よりにもよって真横とは……彼一流の悪戯心ゆえと見るか、それとも無神経ゆえと見るか、実に悩ましいところです。
 
<消えたプレヤード> 

 さて、プレイアス達は7人姉妹ですが、実際に夜空のプレヤデス星団を見上げても肉眼では6個しか星は見えません。
この見えない1つは俗に「消えたプレヤード」と呼ばれており、7人姉妹のうちの1人がとある理由から姿を消したものであると考えられています。

  誰が消えたのかについては2つの説があります。
1つはゼウスの愛を受けて、トロイア王家の祖であるダルダノスを生んだ、エレクトラが我が子の都の滅亡を嘆き、振り乱した髪を長く引いた彗星の姿となって天から去ったと云うもので、もう1つは姉妹の中で1人だけ人間に嫁いだことを恥じたメロペが姿を消したというものです。
どちらにしても然も在らんといった感じですが、それ以来残された6人は失踪した姉妹を慕って毎夜涙に暮れているのだそうです。

  7人姉妹とされているのに6個しか見えない矛盾の解決と、ガスに包まれた星団が潤んだように霞んで見えることの説明とを同時にやってのけた、なかなか出来のいいエピソードだと思います。
神話的にも十分納得のいく理由づけですし、星の神話に必要なロマンにも不足はありません。
あえて蛇足を申し上げるならば、エレクトラ説の方がトロイア戦争の絡みでドラマティックな印象が強い為、より優れていると言えるかもしれませんね。
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