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2009/03/14

ラーマヤナ(29)・ラヴァとクシャ・其の二

ラヴァとクシャ・其の二

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<ラーマの出陣>

 王宮では、バラタが沈痛な面持ちでラーマに語りかけました。

「兄上、この様な不幸な出来事は、シータを森へと追放した報いに違いありません」

 ラーマは言葉を失ってしばらく考え込みましたが、やがて王座から立ち上がりました。

「バラタよ、お前は戦場へ出かけるのが恐ろしくてそのようなことを言うのではないか。よかろう、私自身が兵を率いてその少年とやらに対面しようではないか」

 ラーマの言葉に慌てたバラタは答えました。

「いいえ、兄上が自らお出かけになる事はありません。私が行って参りましょう」
「そうか。それではハヌマーンと猿軍の兵士を連れて行くがよい」

 バラタとハヌマーンの軍が近づいてくるのを見て、ラヴァはクシャに言いました。

「おや、あれはラーマの猿兵だよ。あいつらはランカ島の悪魔を退治したっていうじゃないか。その軍を僕らがやっつけちゃったら見ものだね」

 こうして双子と猿軍の戦いが始まりましたが、猿兵達は次々と二人の放つ矢に倒されていき、バラタは顔色を失い、ハヌマーンは少年達の弓術の見事さに驚嘆しました。

「ハヌマーンよ、私はいくらなんでも少年を手にかける事はできない。彼らを捕らえて、ここへ連れてきてはくれないか」

 ハヌマーンは棍棒を手に二人へと近づきましたが、ハヌマーンすらも彼らの放つ矢には立ち往生してしまい、なかなか捕らえることはできません。
止むを得ずバラタが放った矢は、ついにラヴァに命中しましたが、ラヴァが倒れたのを見てクシャが放った矢はバラタの胸に深々と刺さり、バラタは意識を失ってしまいました。
クシャがラヴァに刺さった矢を引き抜き手当てをすると、あっという間に傷が治ってラヴァは再び立ち上がりました。

 バラタ敗北の知らせを受け、終にラーマ自らが馬車を率いて出向き、話に聞く少年二人に向かい合うと、ラーマはなにやら親しみを感じ、彼らに優しく話しかけました。

「少年よ! 君たちは何者か? 父上と母上の名は?私の兵士達を総て倒してしまうとは、なんと素晴らしい兵士だろう」
「おべっかを使っても無駄だよ。さあ、黄泉の国へ出掛ける覚悟はできたかい?」
「いや、私は君達の事を知る前に戦いを始める訳にはいかない。まずは身分を名乗りなさい」
「いいでしょう。僕たちの母上、ヴァンデーヴィーはミティラー国のお姫様だ。僕らの育ての親は聖仙ヴァールミキ。父上のことは何も知らないよ」

 少年達が我子である事を知ったラーマは、計り知れない喜びを覚えましたが、ここで口にすることはできませんでした。

「王様、自己紹介はこれで良いかな。さあ、弓を構えたらどうだい。怖かったら白馬を置いて逃げてくれれば何もしないけど」

 終にラーマと少年達の戦いが始まりましたが、ラーマは二人の放つ矢を射落とすばかりで、彼等に直接矢を射掛ける事はありません。
これに焦れたハヌマーンが棍棒を持って襲い掛かりました。

「また出てきたな、猿め!」

 クシャとハヌマーンが取っ組み合いを始めましたが、やがてハヌマーンは両手両足を縛り上げられてしまいました。

「さて、この猿をどうしてやろうか」
「母上へのお土産にしようじゃないか」

 少年たちは縛り上げたハヌマーンを連れて、庵へと引き上げていきました。
庵のそばまで帰ってくると、二人は大声で呼びかけました。

「母上! 今日はおもしろいお土産がありますよ! 外へいらしてください」
「面白いお土産ですって? 何事ですか?」

 いぶかりながら外へ出てきたシータは、縛り上げられたハヌマーンを目にしてたいへん驚きました。

「母君よ! あなたのお子は馬祀祭の白馬を捕らえ、それゆえに王国と戦闘を起こしてしまいた。シャトルグナさま、ラクシュマナさま、バラタさまの三人は意識不明に陥り、今はラーマさま自らが戦場に出向いておいでです」

 思いもよらぬ話にシータは全身を震わせ、二人にすぐにハヌマーンを解放するよう、命じました。
少年たちが不服そうに縄をほどくと、ハヌマーンは急いでラーマの元へと戻って行きました。

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