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2009/09/02

ギリシア神話の神々80

<エオス・朝の告げ手Ⅱ>

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 しかしながら、その視覚的な輝かしさに比べると、エオスの女神としての威光はお世辞にも赫々たるものとはいえませんでした。
残念ながらエオスの地位は、オリュンポスの階層の中でも可也下の方で、権威も権力もほぼ皆無。兄のヘリオスは、ロドス島を領地として与えられ、そこで大々的に崇拝されたというのに、この差は一体何なのでしょうか。

 エオスが上位の神々から侮られた大きな理由――それは彼女の浮薄な性格、およそ女神に相応しからぬ尻の軽さにありました。
元々彼女は、同じティタン神族の一員である星の神アストライオスを夫とし、四方の風神達や無数の星々の母となっていたのですが、愛する夫は神々の大戦・ティタノマキアの敗戦時に他の同族達もろともタルタロスに幽閉されてしまいました。

 夫と引き離されたエオスは、或る時女好きの軍神アレスに言い寄られ、独り身の気楽さで深く考えもせずふらりと共寝をしました。
ところがこのアレス、よりによって美と愛の女神アプロディテの公認愛人だったものですからさあ大変。
恋人を寝取られ、愛の支配者としてのメンツを丸潰れにされた、アプロディテ。

 偉大なる女神の呪いは、立ち待ち効を奏し、以後エオスは若い美男と見れば見境なしの女版ゼウスともいうべき恋の狩猟者になってしまいました。
しかも、これまたアプロディテの呪い故か、彼女が欲しいと感じる相手は、もはや同じ身分の男神ではなく、塵芥にも等しい死すべき身の男ばかり。
不死なる女神が、人間の男に身を任せるなど恥ずべき事なのですが、エオスは周囲の神々の苦々しげな視線にも構わず、せっせと美青年漁りを繰り返しました。
毎朝天空を駆けている間に地上を物色し、気に入った若者を見つけると戦車にさらい上げて極東にある自分の宮殿に連れ帰ってしまうのです。
 
 こうして略奪された数多の青年達の中でも最も有名なのは以下の3人です。
しかし、その恋の顛末はいずれもハッピーエンドではありませんでした。

■オリオン
→海王ポセイドンの息子にして、地上最高の美男と称された巨躯の狩人。
その美貌に一目惚れしたエオスは彼をさらったが、何故か自分の宮殿ではなく、アポロンとアルテミスの聖地であるデロス島に連れていく。
そこでしばらくは蜜月の日々を過ごしたものの、オリオンがアルテミス女神と出会ってしまうとあっさりそちらに乗り換えられた。
女神達の中でも最高レベルの美少女であり、狩りの腕前も無敵のアルテミスが相手では、勝ち目はない(異説ではデロス島が穢されたことを怒ったアルテミスにオリオンを射殺されたともいう。どちらにしても彼女に彼を奪われたことには変わりなし)。

■ケパロス
→ポキス王デイオンの息子で、アテナイ王女プロクリスに婿入りした美しい王子。
新婚2ヶ月目のある朝、彼が1人で狩りに出ていたところをエオスが見そめて拉致し、宮殿に監禁して寵愛した。
しかし、新妻に恋着するケパロスが女神との不倫の床を嫌い、彼女に向かってプロクリスの魅力や新婚生活の思い出を延々と語って聞かせたので、 流石の彼女も籠絡を諦め、アテナイに帰してやらざるを得なくなってしまう。

■ティトノス
→トロイア王ラオメドンの息子で、高名なプリアモス王の兄弟。
例のごとく美貌に惹かれてこの若い王子をさらったエオスは、心底彼に惚れ込み、自分の正式な夫にして永遠にともに暮らそうと考えた。
そこでゼウスに「彼を不死にして下さい」と頼んだが、迂闊にも不死より大事な不老を願い忘れた。
ゼウスは、この致命的なミスに気付いていたと思われるが、前述のとおり女神と人間の恋は好ましいことではない為、あえて気を利かせてはやらなかった。
かくしてティトノスは、老いはすれども永遠に死ねないという世にも悲惨な身体となり、花盛りの時期を瞬く間に過ぎて白髪頭の翁になった。
エオスはそれでもしばらくの間は彼の面倒を見ていたが、さらに老衰が進んで寝たきりになると嫌気が差し、宮殿の奧深くに幽閉して視界から消し去ってしまう。

 彼女自身の迂闊な行動も目立ちます。
こうした思慮の浅さや詰めの甘さもまた、軽い扱いの一因となっていたのかもしれませんね。

続く・・・
 
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