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2009/09/05

ギリシア神話の神々83

<ヘスペリス・麗しき宝の番人達>

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 昔々、陽の沈みゆく彼方、世界の西の果てに在る、小さくも美しい楽園に、それはそれは愛らしい3人の乙女達が住んでいました。
彼女達は、ヘスペリスと呼ばれる黄昏の女神達、園の直ぐ傍らで、天空を支えている巨神アトラスの娘神でした。

 他の神々から遠く離れた孤独な暮らしではありましたが、彼女達は別に淋しいとも思わず、楽しく毎日を送っていました。
何故なら姉妹3人常に一緒ですし、可愛いペットも居ますし、それに神々から賜った大切な使命もあったからです。

 その使命とは、神々の女王ヘラの宝物である「黄金の林檎の木」の世話をし、その貴い果実を不埒者に奪われないようしっかりと護る事です。
この木はヘラが、夫君ゼウスと結婚した折に祖母のガイア女神から贈られた記念の品で、これを大変気に入った女神は、自分の所有地であるこの極西の楽園に植え、ヘスペリス達と竜のラドンに守護を命じたのでした。

 守るといってもヘスペリス達は、か弱い娘の身ですから、実際の用心棒役はラドンがしてくれます。
100の頭を持つと言われる、恐ろしい猛竜も乙女達にとっては頼もしい仕事仲間であり、人跡絶えた僻地に暮らす大事な共同生活者。
宝樹の幹に巻きついたラドンを囲んで、世にも美しい澄んだ声で歌いながら輪舞を踊るのが彼女達の日課となっていきました。

 しかし、彼女達やラドンの努力にも関わらず、この宝はいずれ必ずや奪われてしまう運命でした。「いつかゼウスの息子がやってきてこの木から黄金の輝きを奪うだろう」という予言が女神テミスより下されていたのです。
それを知っていたアトラスは、女怪メドゥーサを退治して、ギリシアに戻る途中だった英雄ペルセウスが、ヘスペリデスの園で少し休ませて欲しいと乞うてきた時、さてはこれがかの「ゼウスの息子」かと疑って手荒く追い払おうとした為、怒った彼にメドゥーサの首を突きつけられて岩山に変えられてしまいました。
これが現在のアトラス山脈であると言われています。

 しかし予言が指していた「ゼウスの息子」とは実はペルセウスの事では無く、彼の曾孫に当たる大英雄ヘラクレスだったのです。
名高い「12の難業」の11番目として「ヘスペリデスの園より黄金の林檎を取って参れ」と命ぜられた彼は、散々な苦労の果てにこの秘苑を探し当て、乙女の眼には凶暴な修羅としか見えない猛々しい姿で乗り込んでくると、威嚇を発したラドンを一矢のもとに射斃し、響き渡る悲鳴にも構わず煌く果実をもぎ取って行ってしまいました。
 
 台風一過の園に残されたヘスペリス達は、無惨にも討たれてしまったラドンの傍らで、その死を悲しみ、女神の宝が奪われた事を嘆いてヘラクレスを人でなしと罵るしかありませんでした。
後日アテナによって林檎が無事返却された為、嘆きの種は1つ減りましたが、心優しき乙女達の胸に刻まれたもう1つの傷――すなわち、共に林檎を守った友の死という悲しみは、何時までも癒されなかった事でしょう。

続く・・・

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