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2009/09/19

ギリシア神話の神々97

<アルテミス・生と死の大女神Ⅱ>

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 ゼウスやアポロン、ヘルメス等は、驚異的に成長が早かった事で有名ですが、アルテミスもまた大変に早熟な娘でした。
何しろ生後数分で、彼女は弟を生もうとする母神レトの産婆となったのです。

 ゼウスの妃ヘラに出産を妬まれたレトは、大変な難産に苦しめられていました。
しかし、そのひどい陣痛の原因は弟アポロンであり、アルテミス自身は母を悩ませる事なく安らかに生まれたと言われます。
それを見た運命の女神モイラ達は、すぐさま彼女に出産の女神としての権能を与え、アポロンを生まんとして苦悶する母の助産婦を務めさせたのです。
生まれた途端に女の修羅場で、大仕事を果たす羽目になったアルテミスには、無心にお乳を飲んで眠っていればいい「普通の子供」の期間などありませんでした。
自分たち母子を憎むヘラの迫害の凄まじさも、それを甘受するしかなかった母の無力さも、胎内にいた頃から彼女はまざまざと知っているのです。

 父ゼウスへの懇願に快諾され、喜んだアルテミスは早速行動に移りました。
まず単身クレタ島に飛ぶと、河神に掛け合って娘を20人もらい受け、次いで大洋オケアノスを訪れて60人の愛らしいオケアニスたちを選出しました。
河神もオケアノス・テテュス夫妻も我が娘をレトの名高い姫神の侍女にできる事を喜び、いそいそと送り出しました。
彼女達は、皆女主人に倣って生涯処女を守ることを誓います。

 お伴のニンフ達を引き連れた女神は、次にリパラ島に赴き、ヘパイストスの鍛冶場で働くキュクロプス達を訪ねました。
やがて、ヘパイストスの弓矢を身に帯びた女神は、次に猟犬が欲しくなり、アルカディアの牧神パンの住居へ足を運びました。
ちょうど犬たちに餌をやろうとしていたパンは、快く彼女の願いに応じ、とびっきり勇敢で強く、風よりも足の速い犬達を13匹選りだして分けてくれました。

 80人の侍女に13匹の猟犬という大集団を連れて、アルカディアを歩いていると、アナウロス川の堤防付近でそれはそれは素晴らしい5頭の鹿が跳ね回っているのに遭遇しました。
雄牛よりも大きく、燦然と輝く黄金の角を持った鹿です。
猟犬をその場に留め、自ら俊足を駆って鹿たちを追い回し、見事5頭のうちの4頭を生け捕って自分の黄金の戦車を牽く聖獣にしました(逃げた1頭はケリュネイアの丘に棲みついて「黄金の角を持つケリュネイアの雌鹿」と呼ばれ、後にエウリュステウス王の命令を受けた英雄ヘラクレスによって生け捕られることになります)。

 その後、ミュシア地方のオリュンポス山(神々の住居のオリュンポス山とは別物です)に登って大きな松の木を切り、父神ゼウスの雷から火を移して永久に消えない松明を作れば、準備は完了。
この松明をもって女神は、夜の闇を照らし災いを祓うパイスポリア(光の運び手)となるのです。
自分が必要とするものを自ら手配し、あっという間に万端整えてしまったしっかり者のアルテミス。
これ以後、彼女はレトとアポロン以外の神々とは余り深く関わる事なく、愛する狩猟に没頭します。
人間世界についても関心は薄く、他の神々のように要らぬちょっかいをかけて揉め事を引き起こすこともなければ、無理な我侭を言って父ゼウスを困らせることもありません。
願い事の多いアプロディテやヘラ、アテナなどと比べれば、ゼウスにとってまことに手のかからない娘であったと言えるでしょう。
最もアルテミスにしてみれば、自分を嫌うヘラが側にいる以上、父といえども甘えることはできなかったという苦い事情もあったのかもしれません。

続く・・・

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