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2009/09/20

ギリシア神話の神々98

<アルテミス・生と死の大女神Ⅲ>

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 オリュンポスの有力女神である割に、交際範囲が狭めのアルテミスですが、その分血を分けた家族(父を除く)とは大変強い絆で結ばれていました。
まず彼女は、他の誰よりも母神のレトを大切にしました。
幼い頃の決意そのままにがっちりと母を守り、アポロンと供に母に仇なす者を片っ端からその矢にかける最強の守護者です。
その代表的な犠牲者となったのが、巨人ティテュオスとテバイの女王ニオベの2人でした。

 ティテュオスは、レトを憎むヘラにけしかけられ、デルポイのアポロン神殿へ向かう途中のレトに飛びかかって、手籠めにしようとしましたが、母の悲鳴を聞いて駆けつけたアルテミスに瞬殺され(アポロンに殺された、またはゼウスの雷に撃たれたという説もあります)、タルタロスに突き落とされた後、2羽の禿鷹に肝臓を喰い破られる永遠の罰を与えられました。

 又、ニオベは7人の優秀な息子と7人の美しい娘を生んだことを誇り、傲慢にも女神であるレトを「たった2人しか子を生まなかった子無し同然の女」と罵った挙げ句、「あんな女よりこの私を拝むがよい」と女神の祭祀を妨害しました。
侮辱された母の怒りの訴えを聞いたアルテミスは、即座に弟と供にテバイに飛び、ニオベが嗤った「たった2人」の身でありながら、14人の息子と娘を手分けして皆殺しにしてしまいました。
自分の思い上がりが、招いた報復のあまりの惨さにニオベの血は凍り付き、滂沱と涙を流しながらそのまま石化してしまったといいます。

 これ程にも強く母を愛するアルテミスを、レトも又心底愛し、誇りにしました。
きらめく矢筒を背負った娘が、獲物を追って元気よく山々を駆けめぐり、お伴の乙女達と快活に遊び戯れる姿を見るのがレトの何よりの楽しみです。
「カリステ(最も美しい女)」や「アリステ(最も優れた女)」と呼ばれる事もある、天界屈指の美少女アルテミスが大勢のニンフ達の中でも一際みずみずしく光り輝く様をうっとりと眺めながら、世界一の子に恵まれた母は満悦の笑みを浮かべるのでした。

 双生の弟アポロンも、彼女と大変親密な関係にありました。
というより、処女神であるアルテミスの眼中に入る男といえば、父ゼウスの他はアポロンしかいません。
しかも前述の通り、正妃ヘラと暮らしているゼウスには、あまり甘えられないわけですから、必然的にアポロンが彼女の愛情を独占する事になります。
狩りを終えると、アルテミスは黄金の戦車を駆り、慕わしいアポロンが待つ立派な館へ向かいます。そして詩神ムーサや美神カリスらに輪舞を設ける様命じると、自らも弓矢を外して輝く装身具を着け、アポロンの奏でる竪琴やムーサ達の歌に合わせて、軽やかに舞い踊るのでした。
音楽の神としてのアポロン・ムーサゲテス(ムーサ達の指揮者)と対をなすアルテミス・ヒュムニア(讃歌の女神)としての姿です。

 もちろん彼女は、狩猟の女神としても弓術の神アポロンと対を成しますし、人間に死を齎す神としてもアルテミスは女性を、アポロンは男性を殺すものとして対をなします。
医術の神としてのアポロンには、出産の女神としてのアルテミスが対応するでしょう。
又、成人前の少年少女を養育する役目も共通なら、光明神としての性格も同じ。
2人が共有していないのは、アポロンの予言神としての権能とアルテミスの野獣の女王の地位くらいでしょうか。

 当に実力伯仲の好一対、眩い美貌も仲睦まじさも申し分ない双子の姉弟が並んでオリュンポスの宴席に着いている姿は、配偶神に見立ててもおかしくない眺めだったのではないでしょうか。
そんな相方を持って生まれた2人が、結婚に縁遠くなってしまうのも無理からぬ事です。

続く・・・

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