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2011/01/25

歴史の?その391:虚飾と現実その5

<虚飾と現実⑤:シャーロック・ホームズのモデルその1>

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 20世紀が始まろうとする頃の事、ある晩、スコットランドで週末の狩猟を楽しんだ12人の客は、晩餐の食卓を囲んで、未解決の事件を話題に盛り上がっていました。
客の一人、ジョゼフ・ベル博士は、奇想天外な推理の展開で同席した他の人々を驚嘆させました。
博士は外科医で、その名講義は50年に亘って、エジンバラ大学の学生達を酔わせたのです。
その中には、若き日のコナン・ドイルやロバート・ルイス・スティーブンソンが、居たのでした。

 「殆どの人物は、単に眺めるだけで観察をしない」と彼は言いました。
「人物の容姿を少し見ただけで、その顔立ちに刻まれた国籍や現在の生活が推測され、歩きぶりや癖、時計の鎖についた飾り、衣類に付着した糸屑からその人物の残りの人生も推測されるのです」と付け加えました。

 更に続けて、「私が医学生達に講義を行っていると、教室に一人の患者が入って来た事が有ります。この人物はスコットランド高地連体所属の兵士で、軍楽隊員と思われる」と、私は言った。
「歩きぶりに肩肘を張った様子があり、高地のバグパイプ奏者を思わせたからです。
そして、背が低いので兵士ならば軍楽隊員にしかなれないはずでした。
しかし、男は自分の職業は靴屋で軍隊の経験は無いと言い張ります。
そこで、私は男にシャツを脱ぐ様に命じると、肘の上に焼きごてで付けられた、小さな青いDの印が見て取れたのです。
之は、クリミア戦争の時、脱走兵に付けられた烙印でした。
結局、彼はスコットランド高地連隊の軍楽隊に在籍していた事を、しぶしぶ認めたのでした。
之が、基本なのです」

 誰かが、感嘆の声を上げました。
「ベル先生は、まるでシャーロック・ホームズですね」と。
その言葉に、ベル博士は応えます。
「私が、シャーロック・ホームズです」
ベル博士は、シャーロック・ホームズその人である事を、コナン・ドイルは自叙伝の中で、その様に認めています。

その2へ続く・・・
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