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2011/02/09

人類の軌跡その4:現代に伝わる建造物④

<ラビュリントスと人造湖>

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 ギリシアの歴史家ヘロドトスは、「ピラミッドも驚くに足る建造物であり、ひとつひとつがギリシアの最も野心的な諸作品の多くに匹敵するが、ラビュリントスの方がそれらを凌駕している」と述べています。

 ラビュリントス(Labyrinthos)は「迷宮」若しくは「迷路」の意味に用いられていますが、本来の意味はラビリス(双斧)、すなわち両刃の斧の意味であり、クレタ文明期の最も重要な宗教的シンボルとされ、クレタ文明期のクノッソス宮殿にもラビリスが飾られていました。
この宮殿はクレタ王ミノスが名工ダイダロスに命じて建立したもので、錯綜した建物はラビュリントス(迷宮)の名に相応しく、一度ここに入った者は、再び外部に出る事は不可能と云われて来ました。
王は妃の生んだ半身半獣の怪物ミノタウロスをこの迷宮に幽閉し、やがてこの怪物は、英雄テセウスによって倒されます。

 このクノッソス宮殿は後に埋没し、19世紀の発掘を待つ事に成りますが、ギリシア人は、エジプト第20王朝(紀元前2000年~紀元前1790年)の最大のファラオ、アメネムヘト三世(モエリス)のピラミッドに隣接して建立された葬祭殿を、ラビュリントスと呼ぶ様に成りました。
「この葬祭殿(ラビュリントス)は、ピラミッドに匹敵する仕事で在り、之に隣接してこの一体を整備した、アメネムヘト三世の陵墓が在る」と述べ、葬祭殿(ラビュリントス)を高く評価しています。

 しかし、ヘロドトスは葬祭殿(ラビュリントス)よりも、これ等を造営したアメネムヘト三世によって掘削された、巨大な人造湖(モエリス湖)により多くの評価を与えています。
「葬祭殿(ラビュリントス)は驚くべきものであるが、その傍に位置するモエリス湖は、更に驚くべき存在である。その周囲は3600スタディオン(1スタディオン=185m)、その総延長は、エジプトの全海岸線に匹敵し、湖の形は南北に細く延び、最深部は50ファゾム(1ファゾム=1.85m)に達する、巨大な人造湖である」と述べていますが、既に4000年の昔、エジプトの技術者によって造営されたモエリス湖は、現在迄、この地域の農民にとって恵みの水と成っています。

 大ピラミッドは、素晴らしい技術的工事では在るものの、人類に益する有用な存在では在りません。
モエリス湖に関する記述は、書物でも大変少ないのですが、エジプトを流れる「母なるナイル」河と供に、4000年の長きに渡り、この地域の人々に恩恵を授けている事こそ、驚異と云うべきではないでしょうか?

続く・・・
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