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2011/04/13

人類の軌跡その64:現実と神話の狭間⑦

<トロイを求めて・少年時代の夢に捧げた半生2>

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             アイネイアスのトロイ脱出

◎ヘレネの財宝?

 2年間に及ぶ作業の後、1873年6月14日、彼の目の前には、目も眩む様な財宝が広げられていました。
8700点にのぼる、感嘆すべき金の装飾品の数々で、中でも特に注目に値する出土品は、16,000個の純金の小片で作られた、額から肩まで届く宝冠でした。

 喜びの涙を浮かべながら、彼は美しい妻に宝冠を被せ、彼女を抱きしめて叫んだのです。
「私達の生涯で最も素晴らしい瞬間だ!お前はトロイのヘレネの生まれ変わりだ!」と。
この発見は、発掘作業のロマンティックな終焉に相応しいものでしたが、シュリーマンの判断は間違っていたのです。
彼が発見した古代の都市は、トロイではなく、もっと古い時代に属する都市で、問題に宝冠は、紀元前2300年頃の物であって、ヘレネが生れる1000年以上も昔の、別の王族が身に付けた物でした。

 現在、考古学の定説では、ホメロスによって詠われたトロイは、紀元前1200年頃、ギリシア軍の侵略によって滅亡したものと推定されており、9層に堆積した都市遺構の上部から3層目の都市遺構が、此れに当たるとされています。
シュリーマンは、作業員達がこの層を掘り抜いてしまった為、この都市遺跡を見逃したのでした。

◎夢を追って

 彼が発見した財宝は、ヒッサリックの丘の低部に近い部分に埋没した、他の時代に属する都市の物で、後に彼はその間違いを認めています。
其れでも、現在の研究者達は、ホメロスのトロイ発見の功績と、同じく、更に古い先史青銅器文化の属する古代都市の発見者の名誉を、ハインリッヒ・シュリーマンのものとして彼の功績を称えています。
此れは、夢を追う事に生涯を捧げ、終に其れを成し遂げた、雑貨屋の使い走りの少年に相応しい碑銘でした。

続く・・・
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