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2011/06/23

人類の軌跡その132:ミステリー⑭史上最低

<慎ましい偽札作りその2>

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                アメリカ合衆国連邦財務局

◎無邪気な犯人

 1948年1月、マンハッタンのウエストサイドの空地で遊んでいた7人の子供達が、いろいろなガラクタの中に、亜鉛の印刷原版と30枚程の1ドル紙幣を見つけました。
おもちゃのお札と考えた彼等は、其れを親に見せたところ、親はその札を警察に届け、警察は財務省検察部に通報しました。
3人の捜査官が調査した結果、最近、空地に近いアパートの屋根裏部屋で発生した小火騒ぎの際、消防士がその部屋に在った、印刷機や紙幣を空地に投棄した事が、判明しました。
捜査官が、問題の屋根裏部屋を訪れてみると、紙幣や印刷機、そしてオールド・エイトエイティ本人が居たのです。

 彼の名前は、エドワード・ミューラー。
73歳の男やもめで、青い瞳や、歯の抜けた口元の微笑み、白髪と形の良い口髭からは、どうみても温厚な人当たりの良い、老人にしか見えませんでした。
9年間に渡って偽札を作り続け、彼の慎ましい暮らしの支えに週10枚から12枚の割合で使用したと、彼は愛想よく語りました。
愛妻は1937年に亡くなっていました。
息子と娘は独立し、住居を遠くに移しており、彼自身は、建設工事監督の職を失い、手押し車で街のゴミを拾う仕事をしていました。
自分で食事の用意をし、自分で洗濯を行い、犬を自分で散歩に連れて行く毎日でした。
そして、現金が必要になると、之も自分で作って用意していたのです。

 「作ったのは」と彼は楽しそうに語りました。
「1ドル紙幣だけじゃった。どの店でも1ドル以上使った事はありゃせん。だから、1ドル以上損をした者はおらんよ」と。

 エドワード・ミューラーは自分を善人と信じて疑いませんでしたから、思いやりのある捜査官が、実は自分を逮捕しに来た事を知って本当に驚いたのです。
1948年9月、連邦地方裁判所で彼は罪を認めましたが、高齢を考慮されて、1年の刑期の内4ヶ月を務めた時点で釈放されました。
刑務所に入る前、オールド・エイトエイティは名目的な罰金を1ドル支払いました。
ほんものの1ドル紙幣で。

終わり・・・

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